もしも評価制度が取り入れられたら?
2025/07/17

【職場】「評価制度があったらどう思う?」
──歯科衛生士817名に聞いた、もしものリアルと本音。
歯科医院で働く歯科衛生士さんの仕事は、多岐にわたります。
予防処置、保健指導、ホワイトニングなどの自費対応、さらには受付業務や後輩指導まで…技術職でありながら、接遇・サービス・教育といった「見えにくい努力」も求められる職種です。
そんな中、ふと湧き上がるのが、こんな疑問。
「この頑張り、ちゃんと誰かに見てもらえてるのかな?」
「もっと“見えるかたち”で評価される制度があってもいいのでは…?」
そう思っているのはあなただけではありません。
今回は、Instagramアカウント「@pinooolog」によるアンケート「もしも評価制度が導入されたら?」をテーマに、歯科衛生士817名の本音をもとに、評価制度の必要性とその課題を考えていきます。
結果から見えたのは、“評価”に対する複雑な想い。
まずはアンケートの結果を見てみましょう。
817名の歯科衛生士さんが答えたのは、次の3つの選択肢でした。
やる気がUPする:26.8%
どちらとも言えない:48.5%
辞めたくなる:24.9%
つまり――
約4人に1人が「評価制度があった方がやる気が出る」と答えた一方で、同じくらいの割合で「むしろ辞めたい」と感じていることがわかりました。
さらに、約半数は「どちらとも言えない」と中立的な立場を取っているのが特徴的です。
この数字、どう受け止めればいいのでしょうか?
「評価されたい」は当たり前。でも、それが制度になると難しい。
まず前提として、「自分の頑張りが認められたい」と思う気持ちは誰にでもあるものです。
実際、アンケートで「やる気UP」と答えた人の中には、
「自分の努力や成果がちゃんと評価されるなら、もっと頑張れる」
「後輩指導や資料作成、雑務など“見えない業務”が報われる気がする」
「評価に応じて昇給や歩合があるとモチベーションになる」
といった前向きな声が多数ありました。
一方で、「辞めたい」と答えた人の多くは、
「評価の基準が曖昧だったら納得できない」
「好きでやっていることまで“点数化”されるのがつらい」
「今の雰囲気が壊れるのが嫌。ギスギスしたくない」
といった評価制度の“運用方法”や“空気感”への不安を挙げています。
つまり、評価そのものが悪いわけではないけど、“やり方次第”で良くも悪くもなるというのが、多くの歯科衛生士さんの本音なのです。
評価制度が「成功する医院」と「失敗する医院」の違い
では、評価制度がうまくいっている医院は、何が違うのでしょうか?
実際に導入事例を調べてみると、成功している医院には共通点があります。
✅ 成功例に共通するポイント
評価基準が明確
→ 何をすれば、どう評価されるのか。基準が開示されている。定性・定量の両面で評価
→ 数字(自費の件数など)だけでなく、態度やチーム貢献も評価する。定期面談がある
→ 年1〜2回、院長とスタッフで評価を“すり合わせる”機会がある。昇給・インセンティブと連動している
→ 評価が給与に反映され、成長の手応えが得られる。“嫌な空気”をつくらない
→ 個人評価を他人と比べるのではなく、自己成長の指標として使っている。
特に大きいのは、「数字だけじゃない」という視点。
たとえば、こんな行動も評価されていたりします:
忙しいときに、さっと他の人の補助に入れる
休憩室の片付けを自主的にしている
後輩に寄り添った声かけをしている
こうした行動って、数値では測れないけど、医院全体の雰囲気を作る大切なもの。
「そういうところも見てるよ」と伝わるだけで、モチベーションって変わるんですよね。
一方で、「評価制度で失敗した医院」もある
反対に、制度がうまくいかなかった医院では、こんなことが起きていたようです。
上司の“好み”で評価が決まっているように見える
自費率や売上ばかりが重視され、技術や接遇が軽視される
面談が一方通行で、不満を言える雰囲気がない
“誰が何点だった”という噂が広がり、スタッフ同士がぎくしゃくした
評価結果が給与や待遇に結びついていないため、納得感がない
こうなると、評価制度が「やる気の火をつけるもの」ではなく、「職場の空気を悪くするトリガー」になってしまいます。
だからこそ、制度を導入する側は、
**“評価制度=評価される人のためのもの”ではなく、“評価する側の覚悟が試されるもの”**であることを、忘れてはいけないのです。
歯科衛生士にとって、“良い評価”ってなんだろう?
「頑張ったら、ちゃんと認められたい」
「でも、点数で優劣をつけられるのは嫌だ」
このジレンマに答えはあるのでしょうか?
ひとつ言えるのは、「評価制度」という仕組みがあってもなくても、院長や先輩の“日々の声かけ”こそが最大の評価になるということです。
「さっきの対応、すごく丁寧だったね」
「この資料、見やすく作ってくれてありがとう」
「忙しい中でも笑顔で対応してくれて助かったよ」
こういう言葉があるだけで、報酬よりもずっと嬉しいこともありますよね。
制度は、あくまで“補助ツール”にすぎません。
本当に人を育て、モチベーションを高めるのは、日々の信頼とコミュニケーションにあります。
まとめ:評価制度は“武器”にも“毒”にもなる。
今回のアンケートを通じて分かったのは、
**歯科衛生士は「評価されたい」けど「評価制度には慎重」**というリアルでした。
だからこそ、制度を導入する際は…
目的や基準を明確にすること
定期的な対話の場をつくること
チームの空気を守ること
この3つが欠かせません。
そして何よりも大切なのは、制度よりも日々の“ありがとう”の積み重ねかもしれません。